泉屋周一氏 集中講義 00年6月12日(月)〜16日(金) 東京大学大学院数理科学研究科 (なお、13日(火)には17時から18時まで トポロジー火曜セミナーでお話しいただきます。) 講義内容 まえおき: フィールズ賞受賞者ルネ・トムが1970年代初頭に提唱したカタストロフ理論の 中で殆ど唯一成功したものが「初等カタストロフ理論」と言う、関数族の特異点の 理論の応用であった.ただし、当初あまりにもセンセーショナルに宣伝されたため に、「心有る数学者」からは「眉唾もの」のように思われ、敬遠された歴史がある. 私は、当時「心ない数学者の卵」であったので、この分野の研究を始め、以来20 数年特異点論とはつき合っている.私の見るところ、トム以降、マザー、アーノル ド、ウオール、ブルースなどの努力により数学や厳密科学内での各種の応用が見い だされてきた.この講義では、私自身の関与した応用を中心に、特異点論と言う見 方を通すと、古典的ですでに研究しつくされてしまったかに見える分野にも、新た な光を当てることが出来ると言うことを解説してみたい. 目標: 滑らかな関数族の特異点理論を応用して、空間内の部分多様体(曲面や曲線) に付随した局所不変量を構成・研究出来ることや、一階偏微分方程式の 解の特異性のメカニズムを研究できることを理解してもらう. 大体、以下のように進めたいと思います: 1)平面曲線の例(動機付け):ジェネリック微分幾何学とは? 2)関数族の特異点理論超入門 3)空間曲線や曲面に応用してみよう 4)ラグランジュ(ルジャンドル)特異点論入門 5)双曲的微分幾何学への応用 6)一階偏微分方程式の多価解と弱解の関係 ただし、順番が変わる可能性もあります. 参考書: 泉屋・石川著:応用特異点論 共立出版 予備知識:線形代数、微積分、位相空間論のみ. ただし、多様体論や微分幾何学を知っていれば、より理解しやすい.