2007年度夏学期 教養学部全学自由研究ゼミナール

確率から統計力学へ

担当:一井信吾(大学院数理科学研究科)


日時

月曜5限

場所

数理科学研究科棟1階002号室 5階570号室(5月21日より変更)

授業の目標・概要

統計力学といえば、量子力学と並んで現代物理学の基礎をなす一大理論体系で、物理学科等では解析力学、熱力学、量子力学等の知識を前提に詳細に論じられるのが常ですが、それだけになかなか近づきがたい印象を与えるものでもあるかもしれません。

ところで、近年、経済物理学・確率的情報処理・複雑ネットワークの理論など、「モノ」の理論から「コト」の理論へと物理学的手法の適用範囲を広げようという試みが活発になされるようになっていますが、そこで最も役立つことが期待されるのが、ミクロな構成要素とマクロな系の性質をつなぐ統計力学の手法です。このため、これまで物理学とはあまり縁がないと思われてきた分野の人も統計力学を学ぶことで何か新しいことができるのではないかとの期待が高まっています。

そこで本講では、あまり物理学的な面を強調せず統計力学のエッセンスを描いたテキストを用いて、統計力学への軽やかな接近を試みようと思います。テキストは数学の立場からのものですが、駒場前期課程の学生でも少し背伸びをすればついて行けるのではないかと思います。1年生では少ししんどいかもしれませんが、意欲のある皆さんの参加を期待します。

授業計画

駒場キャンパスの片隅にひっそりと建つ数理科学研究科棟に皆さんを招待します。日ごろの喧騒渦巻く講義棟とはまた異なった、静謐でアカデミックな雰囲気(本当か?)を味わってください。第1回4月16日の集合場所などの情報を以下のWebに載せますので、参加希望の方は必ず参照してください。

    http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~ichii/msm2007/

 

「授業の目標、概要」に掲げたように、テキストはあまり物理的な知識や考え方を前提にせず、確率論の立場から統計力学のエッセンスを理解しようとするものです。数学・情報に興味がある人には比較的近づきやすいのではないかと思います。そしてこの後たとえば

ü  西森秀稔『スピングラスと連想記憶』(岩波書店、2003)

ü  樺島祥介『学習と情報の平均場理論』(岩波書店、2002)

ü  伊庭幸人『ベイズ統計と統計物理』(岩波書店、2003)

ü  豊田正『情報の物理学』(講談社、1997)

ü  西森秀稔『スピングラス理論と情報統計力学』(岩波書店、1999)[この本は少し程度が高い]

ü  増田直紀、今野紀雄『複雑ネットワークの科学』(産業図書、2005)

ü  田中和之編著『確率的情報処理と統計力学』(サイエンス社、2006)

などで扱われている分野につながっていくと面白いのではないかと考えています。

なお、もちろん物理系学科進学希望の方も歓迎します。

授業の方法

出席者全員による輪講形式で行います。担当者がテキストを読んできて黒板の前で説明をし、全員で討論します。もちろん担当者以外もテキストの該当部分を読んでくることが前提です。わからないことがあっても簡単にはあきらめず、他の本に当たったりしてよく考えてください。どうしてもわからないときは、せめて何がどのようにわからないのかをはっきりさせて、発表に臨んでください。問題を共有し議論する中で疑問が氷解する感動を味わいたいものです。

成績評価方法

出席と平常の活動状況によります。

教科書

著者 森 真

書名 数学で読み解く 統計力学

出版社 共立出版

学習上のアドバイス

主体的に発表や討論に参加してください。黙って座っているだけでは何も得られません。


Last modified: 2007-05-21 by si