近代日本の科学者の著作集を読む
2016年度教養学部全学自由ゼミナール

  • 2016年度Sセメスター
  • 時間割コード 31041
  • 水曜5限(16:50 ~ 18:35)
  • 1号館114号室
  • 担当
    一井信吾数理科学研究科
    e-mail: ichii@ms.u-tokyo.ac.jp

    授業の目標、概要

    近代日本の生んだある一人に科学者(*)の残した著作を、一人ずつ、丸ごと読んでみたい、と考えています。

    (*) この授業では、議論の焦点をある程度絞るため、自然科学・医学・工学・農学などのいわゆる理系の科学者を対象とします。いうまでもそれは一般論として社会科学・人文科学の研究者を科学者として軽視するということではありません。

    明治以降、近代日本は西洋科学を急速に摂取し、明治末年頃には世界的に認められる業績を生み始めるまでに至りました。 その原動力は言うまでもなく私たちの大先輩である有名無名の科学者たちです。 科学者の業績はもちろん論文や専門書にまとめられますが、夏目漱石門下の文人としても知られる寺田寅彦や、 東洋哲学に造詣の深い湯川秀樹をはじめとして、随筆の筆を振るった科学者も少なくありません。 論文や専門書以外のいろいろな著作を含む全集・著作集が編まれている科学者は、文学者や思想家などに比べれば多くはありませんが、かなりの数に上ります。 駒場図書館や総合図書館の書架に眠るそれらの本を引っ張り出し、今日の目で読み直してみたいと思うのです。

    一人の科学者の生い立ちや研究の道筋をたどり、自然や社会についての考え方をとらえるには、残された著作を丸ごと読んでみることが最低限必要でしょう。 3.11以降、日本の科学・技術のありかたを根底から問い直す作業の一つとしても、 社会に大きな影響を与えた科学者たちの思考をあらためて見直すことは有意義なのではないでしょうか。

    このような理由を離れても、著作集を読むのは単純に楽しいことです。 自分の関心に引きつけて、必要そうに見える巻だけをつまみ食い的に取り出して調べるのではなく、解説もエッセイも報告も丸ごと読んでいく。 そして一人の人間の活動の総体が浮かび上がってくるのを見届ける。 これが読書の楽しみというものではないでしょうか。

    今回、私(一井)は中谷宇吉郎(1900-1962)を選びます。 中谷宇吉郎は物理学者ですが、一般には雪に関するエッセイで知られています。 『中谷宇吉郎集』全8巻(岩波書店)があり、随筆をテーマごとに編集して収めています。 まずはこの選集によって随筆を味わいます。 しかし、誰であれ人は様々な面を持つものです。 何年か続けているこのゼミでは、著作集を読み進めるにつれて著者の様々な人柄や思想に触れ、 思いがけない発見に驚かされてきました。 今回も、みなさんと一緒にそのような驚きを楽しみたいと思います。

    同時に、参加者には、各自、一人の全集・著作集をとにかく選んでもらいます。 分量や興味のありかをよく考えて選択してください。 以降は、どんどん読み進めます。 毎週の授業時間には読んだものについて報告し、全員で比較し議論します。 授業が進行するにつれ、参加者の発表の割合を増やしていきたいと思います。

    授業計画

    • 第1回 ガイダンス 趣旨説明、フリーディスカッションなどを行います。 参加者には、各自、 日本の科学者(自然科学および工学・医学など科学の応用に関する研究者、教育者)の全集・著作集を一つ選んでもらいます。
    • 第2回以降 報告とディスカッション
    • 最終回 まとめ

    授業の方法

    報告とディスカッションの回は、次の二本立てでいきます。

    まず、私(一井)が中谷宇吉郎の著作に基づく報告を行います。 著作集の編集方針や、著者を取り巻く時代背景、 科学者らしい(またはらしからぬ)見解や思想の表現に注意してどのように読み解いていくか、 一つのサンプル(お手本ではない)を示します。

    同時に、参加者には各自が選択した著作集に基づく報告を行ってもらいます。 授業が進行するにつれ、 参加者の報告とそれに関するディスカッションに充てる時間の割合を増やしていきます。

    成績評価方法

    毎回提出する報告シート、討論への参加状況、及び期末レポートによる

    教科書

    教科書は使用しない。

    参考書

    全体を通じての参考書は使用しない。

    ガイダンス有無

    第1回授業日に行う。

    履修上の注意

    とにかくどんどん読みすすめ、報告・議論を行いたいので、来ると決めたらできるだけ休まずに来て下さい。

    学習上のアドバイス

    しっかり読んで、それに基づいて議論するという当たり前のことを当たり前にやりましょう。

    読んだことを報告シートに(でなくてもいいですが)まとめることも大事です。書かないとすぐに忘れていってしまいます。

    これまでの記録

    2014年度

    • 神谷美恵子著作集
    • 伊藤俊太郎著作集
    • 今西錦司全集
    • 辻村太郎著作集

    2013年度

    • 神谷美恵子著作集
    • 坂口謹一郎酒学集成
    • 牧野富太郎選集
    • 小倉金之助著作集