近代日本の科学者の著作集を読む
2015年度教養学部全学自由ゼミナール

  • 2015年度Aセメスター
  • 時間割コード 51136
  • 木曜5限(16:50 ~ 18:35)
  • 5号館515号室
  • 担当
    一井信吾数理科学研究科
    e-mail: ichii@ms.u-tokyo.ac.jp

    授業の目標、概要

    近代日本の生んだある一人に科学者(*)の残した著作を、丸ごと読んでみたい、と考えています。

    (*) この授業では、議論の焦点をある程度絞るため、自然科学・医学・工学・農学などのいわゆる理系の科学者を対象とします。いうまでもそれは一般論として社会科学・人文科学の研究者を科学者として軽視するということではありません。

    昨年、高野文子という寡作な漫画家が出版した『ドミトリーともきんす』(中央公論新社、 特設ページもあり)は、この作者らしい不思議なテイストの漫画ですが、その帯の宣伝文句に「20世紀に活躍した日本の科学者たちは、専門書のみならず、一般向けに多くの随筆を残しました。」とあります。

    夏目漱石門下で文人として知られる寺田寅彦や、東洋哲学に造詣の深い湯川秀樹をはじめとして、随筆の筆を振るった科学者は少なくありません。論文や専門書以外のいろいろな著作を含む全集・著作集が編まれている科学者は、文学者や思想家などに比べれば多くはありませんが、かなりの数に上ります。駒場図書館や総合図書館の書架に眠るそれらの本を引っ張り出し、今日の目で読み直してみたいと思うのです。

    科学者の業績はもちろんは論文や専門書にまとめられますが、多くの場合著作はそれにとどまりません。一人の科学者の生い立ちや研究の道筋をたどり、自然や社会についての考え方をとらえるには、残された著作を丸ごと読んでみることが最低限必要でしょう。3.11以降、日本の科学・技術のありかたを根底から問い直す作業の一つとしても、社会に大きな影響を与えた科学者たちの思考をあらためて見直すことは有意義なのではないでしょうか。

    このような理由を離れても、著作集を読むのは単純に楽しいことです。自分の関心に引きつけて、必要そうに見える巻だけをつまみ食い的に取り出して調べるのではなく、解説もエッセイも報告も丸ごと読んでいく。そして一人の人間の活動の総体が浮かび上がってくるのを見届ける。これもまた読書の楽しみというものではないでしょうか。

    参加者には、各自、一人の全集・著作集をとにかく選んでもらいます。分量や興味のありかをよく考えて選択してください。以降は、どんどん読み進めます。毎週の授業時間には読んだものについて報告し、全員で比較し議論します。参加人数が許せば、担当教員も一人の参加者として加わります。

    一口に全集・著作集といっても、さまざまなものがあります。科学者に関しては、作家のように完備した全集はまずないのですが、それでも、主要な書物・論文だけを集めたものから、雑誌や新聞に載ったエッセイや、書簡・日記なども収録したものまで、いろいろです。それぞれ読み比べるのも面白そうです。

    授業計画

    • 第1回 趣旨説明、昨年度までの成果紹介、各自対象とする科学者を決めること、報告の分担など
    • 第2回以降 報告と議論 
    • 最終回 まとめとレポートについて

    授業の方法

    参加者は、各自、日本の科学者(自然科学および工学・医学など科学の応用に関する研究者、教育者)の全集・著作集を一つ選ぶ。

    毎週、授業時間までに、選択した全集・著作集の(原則として)一冊を読破する。

    授業時間には、読んだ一冊について報告シートを作成し、報告する。 参加者の数によるが、これとは別に、毎回一名の担当者を決めて、それまでに読んだ著作の全体をふまえて選択した科学者の特徴などについての報告を行うことも考えられる。

    以上の報告をふまえて、全員で議論する。

    これらの活動を総合し、最後にレポートを作成する。

    成績評価方法

    毎回提出する報告シート、討論への参加状況、及び期末レポートによる

    教科書

    教科書は使用しない。

    参考書

    全体を通じての参考書は使用しない。

    ガイダンス有無

    第1回授業日に行う。

    履修上の注意

    とにかくどんどん読みすすめ、報告・議論を行いたいので、来ると決めたらできるだけ休まずに来て下さい。

    学習上のアドバイス

    しっかり読んで、それに基づいて議論するという当たり前のことを当たり前にやりましょう。

    読んだことを報告シートに(でなくてもいいですが)まとめることも大事です。書かないとすぐに忘れていってしまいます。

    これまでの記録

    2014年度

    • 神谷美恵子著作集
    • 伊藤俊太郎著作集
    • 今西錦司全集
    • 辻村太郎著作集

    2013年度

    • 神谷美恵子著作集
    • 坂口謹一郎酒学集成
    • 牧野富太郎選集
    • 小倉金之助著作集