2010年度冬学期 全学自由研究ゼミナール
100年前の学生は何を学んでいたのか
火曜5限 516教室
担当 一井信吾(数理科学研究科)
授業の目標、概要
この授業では、約100年前、具体的には明治時代の終わりから大正時代頃の旧制高等学校の学生がどのような勉強をしていたのかを、彼ら(旧制高校
は男子校です)が用いていた教科書を読み、問題を解くことによって実感することを試みます。担当教員は能力の制約により数学と物理を主に取り扱う
予定ですが、受講生の皆さん各自の関心により他の科目(特に語学)も広く取り扱ってもらえればよいと思います。
東京大学教養学部が旧制の第一高等学校と東京高等学校を前身として設立されたことや、ここ駒場キャンパスが昭和10年以来その第一高等学校の敷地
であったこと、そして1号館や101号館が当時からある由緒正しい建物であることは、皆さんも知っていることと思います。
旧制高校での生活は卒業生の回顧録や当時の青春文学でさまざまに描写されています。自治の伝統であったりバンカラであったり、寮歌であったり教養
主義であったりと、今では考えられない一種独自の魅力を伝えてくれています。ところが、なぜか、講義や試験はどのようなものだったのか、そもそも
どのような入学試験を経て入学したのか、旧制大学の受験準備はどのようにしていたのかなど、その旧制高校で学生がどのような勉強をしていたのかを
伝える記述は、生活上の面白おかしいエピソードに比べあまり目立ちません。教養学部前期課程に学ぶ皆さんと同じように、高等教育の入口という立場
に立っていた学生の実感を、彼らが用いた教科書や参考書をつぶさに見ることで追体験してみます。100年前に生きた大々先輩達の苦労をしのびつ
つ、近代日本社会のイメージをミクロに再構成できればよいと考えています。
幸いここ教養学部には旧制一高の蔵書が多数残されていますし、同じ駒場キャンパスにある数理科学研究科にも貴重な関連書物があります。これらの書
物ももちろん活用できますが、授業では主に国立国会図書館のサービスである近代デジタルライブラリーを活用します。興が乗れば、古書店巡り実習な
ども行ってみたいと考えています。
授業のキーワード
旧制高等学校、教科書、試験
授業計画
- 最初に前提知識として旧制中学・高校・大学などの教育制度の概観をします。講義形式で行います。
- 国立国会図書館の近代デジタルライブラリーでは、明治・大正期に刊行され、国会図書館におさめられている書物がデジタル画像で閲覧で
きるので、これを最大限に活用します。正式な教科書や堅い参考書だけではなく、いわゆる受験参考書的なものも含まれている(中には書き込
みがあるものまであります)ので、学生の勉学の実態をかいま見ることができるのではないかと思います。最初の数回は担当教員が行います
が、その後は受講生が各自選んだテキストをもとに発表を行ってもらいます。
- テキストの読み方等に慣れてきたら、駒場図書館や数理科学研究科図書室所蔵の貴重書を見せてもらうことも計画しています。
- さらに興が乗れば、神田神保町で古書店巡り実習を行います。
授業の方法
最初の数回は講義形式で行いますが、その後は基本的に各自テキストを読んできて、担当者が発表し、全員で議論することになります。
成績評価方法
発表、議論への参加等授業中の活動によって評価します。
参考書
書名 :旧制高校物語
著者 :秦 郁彦
出版社 :文藝春秋
ISBN :978-4166603558
履修上の注意
正字旧かなの文語文で書かれた文章をひたすら読んでいくことになります。本文はカタカナ書きだったりもします。じっくり読みましょう。
学習上のアドバイス
大々先輩達の努力を忍び、苦労に共感する気持ちのある人に集まってほしいと思います。
関連ホームページ
http://www.ms.u-tokyo.ac.jp/~ichii/2010winter/
2010/10/12 一井信吾