線型代数学」(東京大学出版会,足助太郎著)に関する補足事項(旧版)

PDF版 [2012/9/22]

正誤表(これらについては,機会があれば紙幅の許す限り修正する.)[2012/9/22]

負の行数は下から数えて何行目であるかを表す.
また,「*」は数学的な内容に直接関わる,「・」はそのほかの訂正や補足などを表す.
「※」は何らかの修正を加える予定であるが,保留している事項を表す.
ブラウザによっては添字の i と j が同じに見え,よく分からないかもしれないので,添字が関わる訂正については
PDFファイルを参照するか,文字を拡大するなどされたい.

2012.9.22(同日に再修正有り)
* 52頁,問 1.7.11,2行:誤「第 l主座小行列」,正「第 k主座小行列」
* 85頁,例 3.1.6の 6):冒頭の一文を「V を数列全体のなす集合とする.即ち,V={{a_n}n=1,2,...|a_n∈K}と置く.」に差し替える.
・ 92頁,定義 3.2.22,2行:誤「部分空間」,正「部分線型空間」
* 92頁,脚注 7:「(…)SpanK(v_1,...,v_r)など(…)」を「(…)SpanK(v_1,...,v_r)あるいは SpanK{v_1,...,v_r}など(…)」に差し替える.
・ 93頁,6行:誤「K-上」,正「K上」
* 94頁,6行及び9行:「(…)生成系(生成元)と呼ぶ.」を「(…)生成系と呼ぶ.各 vαあるいは vαたちを総称して生成元と呼ぶ.」に差し替える.
* 94頁,脚注 12:次の文章を追加する.「ここで言う 〈vαα∈Aを 〈{vα}α∈A〉で表す流儀もある. 後者の場合 〈φ〉は本書とは異なり自明な線型空間を表すので注意が必要である.」
* 107頁,定義 3.5.25:「正則な線型変換」を「正則な線型変換,あるいは(Vの)線型自己同型(写像)」に修正.
※ 144頁,定義 4.1.25:ベクトルを「成分」と呼ぶのは不適切ではないかとの指摘があった. 確かに適切ではないと思うが,ほかにしっくり来る用語が浮かばないので修正は保留する.
* 352頁,右列 -3行:誤「principal minor」,正「leading principal submatrix」

2012.8.12
・iii頁,脚注~1:文末に「(同様の文言にどこかで触れたことがあるが,記憶が定かでない).」を追加.

2012.6.21(2012.6.24追記)
* 55頁,注 2.1.5:1),2)をそれぞれ 2),3)とし,次の1)を追加.
「1) 多重線型性により,Aのある列が oであれば det A=0が成り立つ. 同様のことが行についても成り立つことを後で示す(系 2.3.12).」
・ 61頁,1行:「ただし」以下を次のように変更する.
「ただし A11∈Mi-1,j-1(K), A13∈Mi-1,n-j(K), A31∈M_n-i,j-1(K), A33∈Mn-i,n-j(K)である.
また,`*'はそれぞれ M1,j-1(K), M1,n-j(K)の元を表す.」[2012/6/21]
 ・ 全体の文章のバランスを考え,以下のように修正する(正確には60頁.また,ウェブのページ用に少し記号を変えてあるので,正確にはPDFを参照のこと).[2012/6.24]
補題 2.2.11 函数 G:Mn(K)→Kが列に関する多重線型性と交代性を持つとする.
A∈Mn(K)とし,A=(a_1 ・・・ a_n)と Knの元を用いて表すと aj=eiが成り立つとする. a'kを akの第 i 成分を
0 に置き換えて得られる Knの元とし,A'=(a'1 ・・・ ei ・・・ a'n) と置く(ただし,ei
第 j 列であるとする)と G(A)=G(A')が成り立つ. つまり,(途中は htmlで表現し
にくいので省略する.PDFを参照のこと)が成り立つ. ただし,A11,A13,A31,A33
適切なサイズの行列である.
証明. aikを akの第 i 成分とすれば a'k=ak-aikeiが成り立つ. G の列に関する多重線型性と交代性から(・・・,以下同文).

* 63頁,系 2.3.3:主張を次のように変更する(証明はそのまま通用する).
系 2.3.3 A∈Mn(K)とする. A∈GLn(K)であること,rank A=nであること,det A≠0であることは互いに同値である.
また,A∈GLn(K)について,det A-1=(det A)-1が成り立つ.
* 65頁,系 2.3.12:「(・・・)複数持つような行列の(・・・)」を「(・・・)複数持つような行列や,ある行が oであるような行列の(・・・)」に変更.
・ 69頁,例 2.4.2末尾:「また,σ= (   1   2   3  
  3   2   1  
) が成り立つ.」を 「また,上の記法を用いるならば σ= (   1   2   3  
  3   2   1  
) である.」に差し替え.
・ 69頁,脚注11:次と差し替える(記号が不正確なのでPDFファイルを参照のこと).
「ほかの行列とは全く異なるものを表していて,例えば積(定義 2.7.3)は異なる. 本書では混乱を避けるため,Snの元に関するこの記法は極力用いない.」(6/21再修正)
* 180頁,定理 5.1.10:1)の末尾に以下の文章を追加.
「等号が成り立つことと,∃λ∈K, w=λv あるいは ∃μ∈K, v=μwが成り立つことは同値である(この条件が成り立つとき,vと wは平行であると言う).
また,〈v | w〉=||v|| ||w||が成り立つことと,∃λ∈R s.t. λ≥0, w=λvあるいは ∃μ∈R s.t. μ≥0, v=μwが成り立つことは同値である.」
* 181頁,定理 5.1.10の証明:1)の証明の末尾に以下を文章を追加.
「|〈v | w〉|=||v|| ||w||が成り立つとする. v=oであれば v=0wなので,v≠oとする.
u=w- 〈v | w〉
 ||v||2 
v と置けば,上と同様の計算により ||u||2=0が示される.
従って w= 〈v | w〉
 ||v||2 
v である.〈v | w〉=||v|| ||w||の時には,これらの値は
非負の実数であることに注意すればよい.いずれも逆は容易に示せるので省略する.」

2012.6.20
* 69頁,2.3節末尾:次の問を追加.
これは 6/21に削除

* 135頁末尾:次の問を追加(記号はやや不正確なのでPDFファイルを参照のこと).
問 3.12.28 a,b∈Cとし,a=α+√-1β, b=γ+√-1δ,ただし α,β,γ,δ∈Rとする. また,f=fa,b:R2→R2を以下のように定める.
まず v=t(x y)∈R2とする. そして z=x+√-1yと置き,w∈Cを w=az+bz~により定める(z~は zの複素共役を表す).
最後に,w=t+√-1s, t,s∈Rと表して f(v)=t(t s)とする.
1) fは R-線型写像であることを示せ.
2) 標準基底に関する fの表現行列を簡潔に表せ.
3) fが R-線型同型写像であるための a,bに関する必要十分条件を求めよ.

2012.6.18
* 57頁,11行: 誤「aj=bi+cj」,正「aj=bj+cj」(bの添字の誤りを訂正. 順番に j,i,jとなっているのを j,j,jとする).

2012.4.26
・ 263頁,問 6.7.5の 2):誤「∃δ>0, s.t.」,正「∃δ>0 s.t.」(カンマを取る)

2012.4.19
* 誤りではないが,「スカラー」・「スカラー倍」という用語について補足する.
1) 12頁,定義 1.2.2の直前の文末:「(・・・)数ベクトルと呼ぶことがある.」を「(・・・)数ベクトルと呼ぶことがある.また,これに対して RやCの元(実数や複素数)をスカラーと呼ぶ.」とする.
2) 15頁,定義 1.3.2の末尾:「(・・・)定数倍するという.」を「(・・・)定数倍,あるいはスカラー倍するという.また,Kの元のことをスカラーと呼ぶ.」に変更する.
3) 83頁,定義 3.1.2:「(・・・)ベクトルと呼ぶ.R-線型空間を(・・・)」を「(・・・)ベクトルと呼ぶ.また,Kの元をスカラーとも呼ぶ.また,R-線型空間を(・・・)」に変更する.

2012.4.18
* 20頁,定義 1.4.1の 1):変形後の行列の (i,n)成分が ainとなっているが,これは λainの誤りである(λが抜けているので補う).

2012.4.8
* 14頁:対角行列は定義されている(定義1.2.7)が,対角成分が定義されていないので,次のように定義1.2.6の末尾に文章を補う.
「A∈Mn(K)であるとき,Aの(i,i)成分,1≤i≤n,をAの対角成分と呼ぶ.」

2012.4.5
* 346頁,6行:誤「佐竹一郎」,正「佐武一郎」(大変失礼しました.お詫びして訂正いたします.)

2012.3.29
* 276頁,脚注7:誤「2∈K」,正「1/2∈K」

2012.3.26
* 228頁,「1)⇒2)の証明」の末尾:誤「piはλiに属する」,正「piはtiに属する」.
・ 313頁,補題9.3.7の証明:誤「[x0:...:xn]」,正「[x0:・・・:xn]」(3箇所).[2012/4/8]修正(角括弧が落ちていた.)

2012.3.17
・ 346頁,-5行:誤「いている」,正「いる」.
* 348頁,-7行:誤「[17]」,正「[18]」([17]が全く関係ないわけではないが,意図としては[18]であった).

2012.3.16
* 69頁,8行:誤「置換群」,正「対称群」(置換群(permutation group)は対称群(symmetric group)の部分群の総称である).
・ 229頁,7行, 12行:「の証明」に下線を補う.
* 332頁,-2行:誤「GLn(K)群には」,正「GLn(K)などの群には」.
* 337頁,例C.4,4):誤「置換群」,正「対称群」.
* 338頁,問C.7,2):誤「整数たちは互いに素(最大公約数が1)」,正「整数たちの最大公約数は1」. 解くのには例えば問C.14を用いるとよい.
* 339頁.Z/pZを考えるときには pは素数としている.p(>1)が素数でないときには Z/pZは単位可換環であるが,体ではない.

これらについては機会があれば修正します.

よくある・あまりない質問とそれに対する回答 [2012/6/18]([2012/6/18]修正)

Q : 行ベクトルや列ベクトルのサイズを「n次元」でなく「n次」と呼んでいるのはなぜか? [2012/4/4]
A : 「次元」という用語はよく用いられますので,素直に「次元」とした方が良かったかもしれませんが,以下のような理由で「次」としました. 一つには第3章以降で扱う線型空間の次元の「次元」との混乱を避けるためです. もう一つは,行列はあくまで数の並び,と考えているので「次元」という呼称はそぐわないと考えました. なお,本書では行列やベクトルを「K^nの元」「(m×n)行列」「M_{m,n}(K)の元」と呼ぶことが多く,「n次」という表現はあまり用いていません. これは迂闊だったのですが,「n次」多項式の「次」と混乱しないように注意して下さい. [2012/4/4]([2012/4/8]修正)

Q : 余因子行列(66頁,定義 2.3.14)の定義が正しくない(転置をとらないのが正しい)のではないか? [2012/6/18]
A : 和訳の問題が絡むので,まず訳語を用いないで説明します. (i,j)成分が (j,i)余因子であるような行列を adjugate matrix,(i,j)成分が (i,j)余因子であるような行列を cofactor matrixと呼びます. adjugate matrixは adjoint matrixとも呼ばれますが,随伴行列(定義 5.2.1)と紛らわしいので避けることが多いようです. 本書では「余因子行列」で adjugate matrixを指しています(357頁(索引)も参照のこと). 一方,「余因子」は英語では cofactorなので,「余因子行列」を直訳すると cofactor matrixとなります. その意味では指摘はごもっともです. しかし,調べた範囲では日本語の「余因子行列」は adjugate matrixを指すので,本書でもこれに従いました. 直訳とはずれがありますので,英語の文献を読み書きする際には注意が必要です. [2012/6/18](同日一部修正)

英語について

英語に関しては出版時点で可能な限り正確を期しましたが,絶対に誤りや不適切な点がないとは言い切れません. 著者の英語の能力に因るところ大ですが,(日本語の場合でもそうであるように,)用語には揺れやぶれがあることにも因ります. お気をつけ下さい.

なお,いくつかの誤りは読者の方にご指摘いただきました. この場を借りてお礼申し上げます.

(著作権に関する表示)
この文書は足助太郎が著作権を保持しています.


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