2019年度表現論シンポジウム

概要

日時
2019年11月12日(火)から15日(金)まで.初日は夕方頃に集合,最終日はお昼過ぎに解散予定.
場所
サンライズ九十九里,千葉県山武郡九十九里町真亀4908,交通案内
世話人
阿部 紀行(東京大学, ),西山 享(青山学院大学)

参加申し込み

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アクセス

以下の送迎バスがでます.

公共交通機関を使う場合は,東京駅,千葉駅,大網駅(JR外房線)からのバスに乗ることになります.行き先などはそれぞれ

です. 東京駅からはあまり本数がありません.[バス時刻表]

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講演者

概説講演

一般講演

プログラム

タイトル・アブストラクト

中島秀斗(名古屋大学) 「等質開凸錐に付随する多変数ゼータ関数の関数等式の対角化および完備化について」

概均質ベクトル空間の理論は,Riemannゼータ関数が関数等式を満たす理由を明快に説明し,関数等式を満たすゼータ関数を系統的に構成する手法を与えている.そうして得られる多変数ゼータ関数について,いくつかの具体例に対してはその関数等式は対角化が可能であることが知られており,特に2元3次形式に付随するものは完備化もなされている.ここでゼータ関数の関数等式の完備化とは,Riemannゼータ関数の関数等式の係数をうまく配分することによって,対称性のより高いRiemannのクシー関数の関数等式を得ることの一般化である.講演者は昨年,等質開凸錐に付随する可解な概均質ベクトル空間の多変数ゼータ関数に対して明示的な関数等式の公式を得た.本講演では,この多変数ゼータ関数に関して,あるクラスの等質開凸錐に付随するものに対しては,その関数等式が対角化および完備化可能であることを報告したい.

林拓磨 (東京大学)「Half-integrality of the $KGB$ decomposition for $\mathrm{SL}_3$」

For a real reductive Lie group $G_{\mathbb{R}}$ and the complexification $K$ of its maximal compact subgroup, the decomposition of the complex flag variety of $G$ into $K$-orbits plays an important role in representation theory of $G_{\mathbb{R}}$.

Recently, several people have started to work on rational and integral structures of Harish-Chandra modules for applications to number theory. In this talk, we will prove that the moduli scheme of Borel subgroups of $\mathrm{SL}_3$ over $\mathbb{Z}\left[1/2\right]$ is set theoretically decomposed into four $\mathrm{SO}(3)$-invariant subschemes. This result is a half-integral analog of the $KGB$ decomposition of $\mathrm{SL}_3$ over $\mathbb{C}$. This talk is partially based on a joint work with Fabian Januszewski.

北川宜稔 (早稲田大学)「Wave front sets of matrix coefficients and the discrete decomposability」

実リー群のユニタリ表現とそのベクトルのペアに対して,行列要素という群上の連続関数が定まる.ベクトルのペアの片方がスムーズベクトルであれば行列要素も自動的にスムーズになるが,一般には行列要素はスムーズにならず,非自明な wave front set を持つ. 本講演では,閉部分群や普遍包絡環の部分環に関するスムーズベクトルを考え,その行列要素の wave front set に対して上からの評価を与える.これにより,閉部分群や部分環に関するスムーズベクトルが大きな群のスムーズベクトルと一致するための判定条件を,Roger Howe 氏によって定義された表現の wave front set によって記述することができる.また,小林俊行氏によって与えられた実簡約リー群の既約ユニタリ表現の分岐則の離散分解性や許容性の判定条件との同値性についても紹介したい.

田森宥好(東京大学) 「Construction of minimal representations」

We construct minimal representations in some specific principal series representations as the kernel of intertwining differential operators. The definition of the differential operators is easy, and our main concern is the nonzeroness of the kernel. In the proof, we use a grading by a root system of low rank to study the differential operators.

田中亮吉(東北大学) 「離散群のポアソン境界」

有限生成無限群上の有界調和関数の存在に関わる結果を紹介します. 特にランプライター群などの具体例について, 群作用を使う方法と確率論を使う方法による調和関数の構成を解説するのが目的です. また我々が導入しその性質を研究している離散アファイン群について, その動機と結果をお話しします.

石本宙(京都大学) 「Local intertwining relation for metaplectic groups」

局所ラングランズ対応(LLC)は、「局所体上の代数群の表現」と「ヴェイユ-ドリーニュ群の表現」を対応させますが、これは一般に一対一ではなく、ヴェイユ-ドリーニュ群の表現1つに対して代数群の表現が複数対応します。Local intertwining relation(LIR)は、その複数個の表現一つひとつを分類するための関係式です。今回、メタプレクティック群$\mathrm{Mp}(2n)$のLIRを定式化し、更に奇数次特殊直交群$\mathrm{SO}(2n+1)$のLIRから$\mathrm{Mp}(2n)$のLIRを導出できることがわかったので、これをお話したいと考えております。

織田寛(拓殖大学)・示野信一(関西学院大学) 「ミニスキュル$K$タイプに対する球関数とHeckman-Opdam超幾何関数」

Riemann対称空間$G/K$における調和解析の諸結果を$G/K$上の等質ベクトル束に拡張するとき,その難しさはファイバーである$K$タイプに依存する. 我々は古典的な場合と同様に具体的な結果が得られる$K$タイプのクラスとして,複素Lie群のミニスキュル表現,実スプリット群のファイン$K$タイプを同時に一般化する「ミニスキュル」というクラスを導入する. Wallachのスモール$K$タイプもミニスキュルであり,その場合は($1$つの例外を除いて)等質ベクトル束の基本球関数がHeckman-Opdam超幾何関数で記述される.また,ベクトル束の不変微分作用素環が$1$階の元を含む場合は,基本球関数がOpdamの非対称超幾何関数で記述される. このような記述は等質ベクトル束の球変換とCherednik変換を結びつけ, 前者に対する逆変換公式やPlancherel測度を後者の理論から導くことを可能にする.

小寺諒介(神戸大学) 「Level one Weyl modules for toroidal Lie algebras」

複素単純Lie代数と2変数ローラン多項式環のテンソル積を中心拡大したものをトロイダルLie代数と呼ぶ. この講演では,トロイダルLie代数の2種類の表現の構成の関係について紹介する.一つはレベル1 Weyl加群という,生成元と関係式によって定義される最高ウェイト表現である.もう一つは,頂点作用素を使って構成される表現である.トロイダルLie代数の自己同型で捻ることで二つの表現が同一視される.

嵐晃一(名古屋大学) 「On holomorphic multiplier representations over bounded homogeneous domains」

有界等質領域上の2つの同変正則直線束から自然に定義される表現に, それぞれユニタリ化が存在すると仮定する. それらのユニタリ表現が同値であるのは, 考えているLie 群に含まれる岩澤部分群の表現として2つの表現がユニタリ同値であり, かつある点に関する等方部分群のファイバーへの作用が一致するとき, かつそのときに限るという事実, 及び関連する結果について報告する.

大久保直人(青山学院大学) 「箙の変異とワイル群対称性をもつ離散力学系について」

本講演では,クラスター代数における箙の変異を用いた離散力学系の構成法について紹介する. 箙を不変に保つ変異と置換の合成である「サイクルに付随する鏡映変換」の性質がこの構成の鍵である. この構成によりq-パンルヴェ系やその拡張となるようなワイル群対称性を持つ離散力学系が得られる. 本講演は増田哲氏(青山学院大学),津田照久氏(一橋大学)との共同研究に基づく.

瀧聞太基(東京工業大学) 「A proof of Nandi's conjecture」

We will give a proof of partition theorems conjectured through vertex operator theoretic consideration for level 4 standard modules of the affine Lie algebra of type $A^{(2)}_{2}$ in D.Nandi's PhD thesis (2014). This is a joint work with Shunsuke Tsuchioka.

中島啓(東京大学) 「quantized Coulomb branch とその表現」

Braverman-Finkelbergとの共同研究で与えた、3次元超対称性ゲージ理論のクーロン枝の数学的な定義を、その量子化と表現論に重点をおいて説明する。

廣惠一希(千葉大学) 「Fuchs型微分方程式の合流操作と星型箙多様体の変形について」

Riemann球面上のFuchs型微分方程式のモジュライ空間は星型箙多様体としての実現をもつことがCrawley-Boeveyによって知られている.本講演では確定特異点の合流操作によってFuchs型方程式のモジュライ空間の変形が得られること,またそれがCrawley-Boeveyの対応によって箙多様体の変形も与えること解説する.

関口次郎(東京農工大学) 「On the construction problem of algebraic potentials and reflection groups」

この講演の主要テーマはB. Dubrovinによって定式化された次の予想である.

The conjecture:
Massive irreducible algebraic Frobenius manifolds with positive degrees $d_i$ corresponds to primitive conjugacy classes in Coxeter groups.

この予想は,WDVV方程式の解=ポテンシャルが代数的な場合には,コクセター群の共役類と対応するだろうということである. 多項式ポテンシャルと実鏡映群とが1対1に対応するというHertlingの結果の一般化である.

以前にポテンシャルの一般化であるポテンシャル・ベクトル場を定義して,Painlevé VI方程式の代数関数解に対応するポテンシャル・ベクトル場を熱心に計算していた. 本講演では,$F_4,H_4,E_6,E_7,E_8$型鏡映群と関係するものに限定するが,いろいろな計算手法を使って得られた代数的ポテンシャルを報告する.

その帰結のひとつとして,代数的ポテンシャルのうち,$E_6,E_7$型に関係するものから複素鏡映群ST33,ST34の判別式が導くことができることを示す. 次に3次元のFrobenius manifoldと4次元のtrihamilton構造をもつFrobenius manifoldの間に1対1の対応があるというのがS. Romanoの主張である. それに関係することにも言及する予定である.