儀我 美一 氏 (東京大学大学院数理科学研究科)
『 ハミルトン・ヤコビ方程式と結晶成長 』

内容:
成長する結晶表面の挙動を、巨視的な視点で記述する最も単純なモデルはハミルトン・ヤコビ方程式を用いるものである。成長に伴いファセットと呼ばれる平らな面が平らなまま成長できるかどうか安定性の問題は、複雑な形状が生み出されるかといった形態形成の問題として重要であるが、半導体のような産業技術の問題としても重要である。ハミルトン・ヤコビ方程式で記述される場合、数学的には時間大域的な解の挙動の問題と考えられる。ハミルトニアンが強圧的な場合は力学系的に言えばエルゴード性があることはよく知られている。しかし、上述の問題由来のハミルトニアンは強圧的ではなく、新しい数学的課題、現象が次々にみつかっている。例えば「エルゴード性」は空間の一部でしか成立しないことがわかる。このような数学的成果に触れつつ、結晶成長の問題に対してどのような貢献ができるかについて述べる。