斎 藤 秀 司 (SAITO Shuji)

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講   座 数理代数学講座 教授
研究分野 数論幾何、代数幾何
研究テーマ

(I) 数論的多様体のモチフィックコホモロジーの研究、

(II) 複素多様体上の代数的サイクルのHodge理論を用いた研究。

研究概要

(I) モチフィックコホモロジーとは、代数多様体あるいはもっと一般にDedekind環上の有限型分離的スキームにたいする重要な不変量で、代数体の整数環のイデアル類群や その単数群、あるいは代数多様体のChow群を一般化したものである。もともとGrothendieckが“普遍的なコホモロジー理論”としてその存在を予見していたのだが、現在では種々の定義方法が存在する(Blochの高次Chow群を用いた定義、 Voevodskyによるコホモロジー論的な定義、あるいはMorel-Voevodskyによるホモトピー論的な定義)。現在これについて世界的に活発な研究が行われている。 その理由のひとつは、数論的多様体のゼータ関数の特殊値に関するいくつかの重要な予想(Tate予想、Birch-Swinnerton-Dyer予想、Lichtenbaum予想、Beilinson予想、Bloch-加藤予想)において中心的役割を果たすことにある。例えば代数体の類数公式は、そのDedekindゼータ関数の1 での留数を代数体の類数とレギュレーターを用いて表すものであるが、これらはともに代数体の整数環のモチフィックコホモロジーを用いて解釈しなおすことができる。 当該研究のこの部門の主要目標は、整数環上の有限型スキームのモチフィック
コホモロジーの有限性(つまりこれらが有限生成アーベル群である)の予想である。上述の例においては、代数体のイデアル類群が有限で、単数群が有限性生成であるという古典的な定理に相当する。有限性予想はゼータ関数の特殊値の予想の大きな部分を占める重要な未解決問題で、1次元の場合(代数体の整数環あるいは有限体上の曲線) を除いて殆ど結果が知られていなかったが、最近の研究の進展により高次元でもある場合には有限性が示せるようになってきた。

(II) この部門の研究目標は19世紀の複素関数論の金字塔であるAbelの定理を
高次元化して、高次元複素多様体上の“代数的サイクルを周期積分により統制する” ことである。Abelの定理とはRiemann面上の因子にたいしそれが有理型関数の因子となるための必要十分条件を正則微分形式の積分を用いて与える。
Abelの定理の高次元化とは “高次元代数多様体上の代数的サイクルにたいしHodge理論的な不変量を探し出し、これによりサイクルが有理同値であることを判断する”と言う問題に他ならない。この問題への重要な第一歩がGriffithsが60年代の終わりに定義したAbel-Jacobi写像である。しかし1968年にMumfordは、Abel-Jacobi写像が一般には巨大な核をもつことを示した。当該研究では、Deligne-Beilinsonの “混合モチーフの哲学”に基づき、この問題へのHodge理論的アプローチを行っている。具体的には、代数的サイクルに対する新しい不変量を与える“高次Abel-Jacobi写像”をHodge理論的に定義し、GriffithsのAbel-Jacobi写像では捉えられない代数的サイクルをこれによりとらえることである。
本質的なアイデアは、複素数体を有理数体上の無限次元の多様体とみなすことにより、複素多様体をこの無限次元多様体をパラメータ空間とする多様体の族とみなすというものである。

主要論文

[1] J. Lewis and S. Saito, Algebraic cycles and Mumford-Griffiths invariants,
to appear in Amer. J. Math. (2007),

[2] M. Asakura and S. Saito, Maximal components of Noether-Lefschetz locus for Beilinson-Hodge cycles, to appear in Math. Annalen (2007),

[3] M. Asakura and S. Saito, Noether-Lefschetz locus for Beilinson-Hodge cycles I, Math. Zeit. Vol. 252 (2006) 251--237.

[4] S. M\"uller-Stach and S. Saito, On $K_1$ and $K_2$ of algebraic surfaces,
$K$-Theory Vol. 30 (2003), 37--69

[5] U. Jannsen and S. Saito, Kato homology of arithmetic schemes and higher class field theory over local fields, Documenta Math. Extra Volume: Kazuya Kato's Fiftieth Birthday, (2003), 479--538

[6] S. Saito, Higher normal functions and Griffiths groups, J. of Algebraic Geometry Vol. 11 (2002), 161-201

著書 整数論:共立講座 21世紀の数学(共立出版)
受賞 日本数学会春季賞(1996年)
活動

フレッシュマンセミナー組織委員