数値解析セミナー

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開催情報 火曜日 16:30~18:00 数理科学研究科棟(駒場) 002号室
担当者 齊藤宣一、柏原崇人
セミナーURL https://sites.google.com/g.ecc.u-tokyo.ac.jp/utnas-bulletin-board/

2016年05月09日(月)

16:30-18:00   数理科学研究科棟(駒場) 056号室
田中健一郎 氏 (武蔵野大学工学部)
重み付きハーディ空間における関数近似公式および数値積分公式の設計に対するポテンシャル論的アプローチ (日本語)
[ 講演概要 ]
本発表では,重み付きハーディ空間というある解析関数の空間において,十分に高精度な関数近似公式および数値積分公式の設計法を報告する.ここで考える重み付きハーディ空間は,実軸を含む複素平面上の帯状領域で解析的で,重み関数で指定される重み付きノルムに関して有界となる関数の全体からなる空間である.この空間は,数値計算の対象となるような,一定の条件を満たす解析関数を,適当な変数変換によって変換したものの全体と見なすことができる.このような変数変換は,高精度な計算を実現するためになされる.例えば,有効な数値積分公式として知られている二重指数関数型(DE)公式では,二重指数関数型(DE)変換と呼ばれる変数変換によって,被積分関数を実軸上で二重指数関数的な減衰を持つ関数に変換することが行われる.また,有効な関数近似公式の一つであるDE-Sinc公式でもDE変換が用いられる.

このように,重み付きハーディ空間での関数や積分の近似は基本的な問題と言えるが,この空間において「最適」な公式はそれぞれどのようなものかは,これまで一部の場合についてしか分かっていなかった.本研究では,まず関数近似に対して,一般的な重み関数の場合について,最適な公式を求める問題をポテンシャル論の方法を用いて定式化した.そして,それを近似的に解くことで公式を設計し,また,それらの公式の理論的誤差評価も与えた.これらの公式の厳密な最適性はまだ示せてはいないものの,従来のSinc公式よりも高精度になることが数値実験で観察できている.さらに,数値積分に対しても,類似の方法によって構成した関数近似公式を積分することで公式を設計した.これらについては理論的な誤差評価は得られていないが,やはり数値実験によって,従来の公式よりも高精度な公式が得られていることが観察できた.特に,重み関数が二重指数関数的な減衰を持つ場合について,設計した公式がDE公式よりも高精度となることが観察できた.本研究は,岡山友昭氏(広島市立大学),杉原正顯氏(青山学院大学)との共同研究である.