数理人口学・数理生物学セミナー

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2017年11月16日(木)

16:30-18:00   数理科学研究科棟(駒場) 123号室
中林潤 氏 (横浜市立大学 先端医科学研究センター )
Human Immunodeficiency Virus (HIV) の細胞内複製ダイナミクスと感染個体内における進化 (JAPANESE)
[ 講演概要 ]
今回のセミナーではHuman Immunodeficiency Virus (HIV) の細胞内複製ダイナミクスと感染個体内における進化を取り扱った研究を紹介する。
HIVは+鎖RNAをゲノムとして持つレンチウイルス属に属するレトロウイルスである。RNAを鋳型として逆転写酵素によって産生されたウイルスDNAが、ホストのゲノムにintegrateされ、そこからウイルス遺伝子産物が産生され、最終的にウイルス粒子が複製される。HAART (Highly Active Antiretroviral Therapy) によってHIV感染患者の予後は劇的に改善されたが、いったんintegrateされたprovirusが休眠状態で残存し、何らかのきっかけで再びウイルスを産生することがあり、これがHIV治療の大きな妨げとなっている。Integration siteの決定機構を解明することは、HIVの治療戦略を検討するのに重要である。
HIVのintegration siteはホストのゲノム中に一様ではなく偏って分布していることが知られている。HIV細胞内複製を記述する数理モデルと、これを用いた進化シミュレーションを使って、HIV integration siteの選好性がどのように決定されるか検討した。またデータベースに登録されたHIV integration siteの情報と、ホストのepigenomeデータを統合して網羅的な解析を行い、integration site特異的な塩基配列について検討したので、これらの結果について紹介したい。