数理人口学・数理生物学セミナー

過去の記録 ~04/25次回の予定今後の予定 04/26~


2014年11月05日(水)

14:50-16:20   数理科学研究科棟(駒場) 122号室
中丸麻由子 氏 (東京工業大学大学院社会理工学研究科)
固着性生物の分裂繁殖と環境撹乱について (JAPANESE)
[ 講演概要 ]
親と子が同じ場所に留まる生物もいれば、親とは異なる場所へ子を拡散させるものもいる。環境撹乱下ではリスク回避のために拡散が進化的に有利であるという。しかし一部の生物では、環境撹乱下であっても分裂繁殖を行い、子どもを親元から離れた場所に拡散させない。例えば、コロニーを単位とする固着性生物は環境攪乱下であっても、コロニーを分割させて親コロニーと子コロニーに分かれ(分裂繁殖)、親コロニーの近くに定着する。一方、拡散する生物は少数個体で拡散する場合が多い。
 そこで、環境攪乱下での非拡散戦略が進化をする条件を探るために、分裂繁殖の際の分割比に着目した。今回の研究では、コロニーサイズを4種類にわけ、コロニーサイズが成長率に従って成長すると仮定し、サイズ構造のある差分方程式を構築した。最大のサイズ(サイズ4)になると分割するとした。分割比としては、2:2分割戦略(コロニー分割後の親と子コロニーのサイズがほぼ変わらない)と1:3分割戦略(親子のサイズ差が大きい)の2つの戦略を仮定した。
 基本モデルでは、コロニー間の闘争は無く場所を巡る競争のみとし、コロニーサイズ依存の死亡率を仮定した。死亡を免れると、すぐに次のコロニーサイズへ推移するとした。小さなコロニーの死亡率が他のコロニーサイズの死亡率と比べて非常に高い時は、2:2分割戦略が有利になり、撹乱頻度の高い環境においても有利になるという結果となった。
 次に、基本モデルにコロニーが死亡を免れてもすぐには成長せずに同じサイズの状態のままである確率を導入した。すると小コロニーの成長が他のサイズに比べて非常に遅い時に、2:2分割戦略が有利になる事を示した。
 3つ目に、分巣先の候補地にコロニーが既にある場合にコロニー間の闘争が生じる場合と基本モデルのように闘争の無い場合を比較したところ、基本モデル(闘争無し)のほうが2:2分割戦略が有利になる事を示した。
 以上により、サイズ依存性を考慮する事によって、環境攪乱下でも非拡散戦略が有利になる条件を示す事が出来た。

【参考文献】
Nakamaru, M., Takada, T., Ohtsuki, A., Suzuki, S.U., Miura, K. and Tsuji, K. (2014) Ecological conditions favoring budding in colonial organisms under environmental disturbance. PLoS ONE 9 (3), e91210.

[ 参考URL ]
https://sites.google.com/site/mayukonakamarulab/