数理人口学・数理生物学セミナー

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2014年10月22日(水)

14:50-16:20   数理科学研究科棟(駒場) 122号室
物部治徳 氏 (明治大学先端数理科学インスティテュート)
異なる反応項を持つある系の急速反応極限問題 (JAPANESE)
[ 講演概要 ]
本講演では、ある2成分反応拡散系の特異極限を考える。
尚、本研究は飯田雅人氏(宮崎大学)、二宮広和氏(明治大学)、村川秀樹氏(九州大学)との共同研究である。

特異極限は、反応拡散系(Allen-Cahn方程式やFitzHugh-Nagumo方程式など)を解析する上で重要な手法の一つであり、その極限方程式は方程式の形やパラメータの場所に依存して、界面方程式や自由境界問題などが導き出される。反応拡散系の解のダイナミクスを考察するために特異極限を用いたり、また逆の立場で、界面方程式や自由境界問題を反応拡散系で近似するために特異極限を用いられることもある。

近年、D. Hilhorstらにより\cite{HHP1}, \cite{HHP2}反応拡散系における``急速反応極限"の解析が進められ,様々な方程式において極限問題が考察されている。この解析の発展により、線型拡散を持つ反応拡散系と自由境界問題がある意味で繋がりを持つことが確認されている。しかしながら、それらのほとんどの結果は、反応項に対称性があり、非対称の場合に関する急速反応極限の解析結果はほとんど確認されていない。そこで、我々は最初のステップとして次のような単純な非対称な多項式を持つ反応拡散系の急速極限を考察し、多項式の指数の組み合わせと極限問題の関係について考察を行った:
例えば、ロトカ・ボルテラモデルのある急速反応極限としては、を含む数理もモデル
\[
({\rm P})^k
\left\{
\begin{array}{ll}
u_t=\Delta u- ku^{m_1}v^{m_3} \quad\quad & \mbox{in} \ Q_T:=\Omega \times (0, T), \\

v_t= -ku^{m_2}v^{m_4} \quad\quad&\mbox{in} \ Q_T, \\

\dfrac{\partial u}{\partial \nu}=0 \quad\quad&\mbox{on} \ S_T:=\partial \Omega \times (0, T), \\
u(x,0)=u_{0}(x),\quad v(x,0)=v_{0}(x) \quad\quad&\mbox{in} \ \Omega, \\
\end{array}
\right.
\]

ただし、$\Omega$は$\mathbf{R}^n$の有界領域, $T$は正定数, $\nu$は$\partial \Omega$上の外向き単位法線ベクトル、$m_i(i=1,2,3,4)$は$1$より大きい正定数、$u_0, v_0$は非負の初期値を表す。このとき、適当な初期条件のもとで$k\to \infty$としたとき、次のような結果を得た(詳細は講演内で述べる):
\[
\begin{array}{cll}
&\mbox{ (Case I)}\quad & {\bf m}=(m_1, 1, 1, 1)かつm_1> 3 \
&\Rightarrow \ uは\mbox{$\Omega$}上の熱方程式の解に近づく \\

&\mbox{ (Case II)}& {\bf m}=(1, m_2, 1, 1) かつm_2 >2 \
&\Rightarrow \ uは{\rm supp}\, u_0上の熱方程式の解に近づく \\

&\mbox{ (Case III)}& {\bf m}=(1, 1, m_3, 1)かつm_3> 0
&\Rightarrow \ uは一相{\rm Stefan}問題の解に近づく \\

&\mbox{ (Case IV)}& {\bf m}=(1, 1, 1, m_4)かつ2>m_4> 1
&\Rightarrow \ uは一相{\rm Stefan}問題の解に近づく \\
\end{array}
\]