数理人口学・数理生物学セミナー

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2014年06月25日(水)

14:50-16:20   数理科学研究科棟(駒場) 128号室
中岡 慎治 氏 (RIKEN Center for Integrative Medical Sciences)
T 細胞による腫瘍免疫の数理モデル (JAPANESE)
[ 講演概要 ]
免疫系はウィルスやバクテリアなどを外来抗原と認識して侵入を阻止するのみ
ならず、癌の除去にも貢献している。T リンパ球の集団は非自己(外来抗原)と自
己(生体由来の抗原)を区別し、とりわけ外来抗原に対しては種類に応じて特異的
に認識して除去できる機能を有する。癌は生体組織由来で生じるため、一般に
T 細胞による認識が充分でないと考えられる。また、免疫応答は複数段階の複雑
なプロセスを経て初めて活性化されるため、適切に活性化が誘導される必要があ
る。人為的な介入によって免疫細胞を活性化させ、癌を認識させる治療法が今現
在基礎および臨床研究対象として活発に研究されている。

本講演では、T 細胞を体外で癌由来抗原を認識させて活性化してから体内に戻す
治療法に対して構築したシンプルな数理モデルの解析結果について紹介する。癌
を攻撃する T 細胞の増殖を表す関数型を3タイプ想定し、それぞれに対して解
の漸近挙動を解析した。構築したモデルは癌と免疫細胞の個体群動態を記述した
二次元の微分方程式系であるため、厳密な数理解析とそれに基づいた生物学的
解釈が可能である。これまでに得られた数理解析結果を中心に報告する [1] 。時間が
あれば、細胞レベルでの数理モデルと遺伝子制御ネットワークや癌の
heterogeneity、進化や免疫回避といった研究とどうつなげていくかに焦点を当
てて、マルチスケール数理モデルを用いたアプローチ [2] について話題提供をして
数理科学者と目的や議論を共有したいと考えている。