数理人口学・数理生物学セミナー

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2018年03月19日(月)

17:00-18:00   数理科学研究科棟(駒場) 509号室
杉山 友規 氏 (東京大学生産技術研究所)
Age構造付き増殖過程の大偏差原理を用いた解析
[ 講演概要 ]
細胞集団の“集団”としての増殖率(集団増殖率)を制御することは様々な分野で現れるユビキタスな問題である。例えば医学的分野においては、我々はがん細胞や病原性細胞の集団サイズを抗がん剤や抗生物質などを用いて抑制することを考える。一方進化生物学の文脈では、細胞集団は変動する環境の中を生き残るため、集団増殖率を最大化する。近年の実験装置の発展により、我々は細胞集団が増殖していく様を表す非常に大きな系譜(家系図)データを取ることが出来るようになった。本講演では、この系譜データを用いて集団増殖の振る舞いを解析する方法について紹介する。特にここでは、系譜上に定義される大偏差原理を用いた統計物理学的な構造が重要な役割を果たす。結果としては、集団増殖率が、細胞タイプの確率的変化を表すsemi-Markov過程上の大偏差関数のLegendre変換で評価されることが明らかになる。またこの構造を用いることにより、我々は環境変動に対する集団増殖率の応答を時間遡及的に系譜を辿ったときに得られる統計量を用いて知ることが出来る。