理学部数学科について

  数学というと,教科書にある定理や公式を知識として丸暗記し, それを使って計算して問題の答えを出す機械的な作業だ, という印象を持つかもしれません。 しかしそれは大きなあやまりです。 数学で本当に大切なのは,定理や公式の「意味」を考え, その背後に潜む「原理」や「真理」を理解することです。 数学はこのような体験をとおして, ものごとを深く考えることの喜びや楽しさを教えてくれます。 数学の勉強では,まず基本的な論理や推論形式を学ぶことが求められますが, その本当の醍醐味は,常識を覆すような斬新な発想がひらめけば, それまで想像もできなかったような新理論が生まれ, いまだかつて誰にも答えられなかった問題が解決されることです。 数学は創造性に富み,驚きや感動にみちた営みであり, 日々発展を続けています。

  数学科に進学すると, 19世紀,20世紀に著しく発展した現代数学の基礎を学ぶことになります。 数理科学研究科大学院に進学すると, さらに進んだ勉強をし,研究への道を歩むこともできます。 また一般社会にでる場合でも,  数学の勉強を通じて身に着けた正確な論理性やものごとを深く追求する姿勢は,様々な仕事をする上で 大きな助けになります。というのは,技術が進歩し社会が複雑化するにつれ,ものごとの数理的本質を深く洞察する姿勢がますます求められるようになるからです。数学は自然界の摂理を解明する強力な道具としての役割を果たしてきました。数学科ではまた実社会で脚光を浴びている高度な数学理論を学ぶこともできます。たとえば,数理ファイナンス(下記の「アクチュアリー・統計プログラム」参照)や暗号理論,あるいはコンピュータネットワークや数値計算,アルゴリズム開発などコンピュータに関わる数理です。

   数理科学研究科やほかの大学院などに進学するために何より求められるのは,   1,2年で学ぶ基礎数学をしっかり身につけることです。 専門課程である数学科で学習する現代的な数学は,抽象化が進み, 皆さんがもっている素朴な感覚とはずれているかもしれません。 このギャップを埋めるには,自分で専門書を読むなど, 進んだ数学にふれておく努力をしてみるとよいでしょう。 また物理など,数学と関連深い分野を勉強しておくのも, 豊かな発想を養うのによいと思います。

  数学以外にも,語学,とくに英語は,しっかり勉強しておいて下さい。 4年のセミナーでは,原則として英文テキス トを読むことになります。 また将来研究者になる場合には, 自分で論文を書くとき,研究に関する情報を集めるとき, 英語でほかの研究者と議論するとき, 外国の研究機関に滞在し現地で生活するときなど, あらゆる局面で総合的な英語力が必要になります。 語学教育をやってもらえるのは1,2年だけです。 この間に可能な限り英語力を身につけて下さい。